少女漫画を読みました
少女漫画を何作品か読みました。
15巻以内で完結する作品を一晩かけて読破する生活を約1週間続けました。
普段新書しか読まない人間にとって美しい男女の青春を垣間見るという事は新鮮な体験でありました。
読書後に胸の内に残る少しの寂しさは卒業式に感じたものとどこか感触が似ていて、馴染んでいた世界から外の世界に放り出されたようなそんな気持ちになったのです。
総評すると大変満足な体験であったのです。ただ少しばかりの物足りなさも途中で感じたという事についても述べさせて頂きたいのです。
大盛りの料理を食べてるとどんなに美味しくとも途中でその味に飽きてくる。私が感じたのは恐らくそれと同じ類いのものだったのでしょう。
平均5巻あたりで本命の相手と結ばれて途中揺れ動く事件があるものの最終的には無事に落ち着く。大体の話の筋はこのような流れであります。
物語は終始登場人物の恋愛について描いています。登場人物達は基本的に恋愛しかしていないのです。様々な活動を生活の中で行い、その中で人と関わり恋の物語が生まれるのではなく生活の中から抽出された恋愛要素がダイレクトに届けられるのです。
私にはこれが甘すぎたのでしょう。お砂糖を入れすぎたコーヒーを飲んで胃がもたれてしまったといったところでしょうか。
少し胃を休ませてそれでまた時々思い出して読みたい。そう思っているのです。
答え合わせ
周りの目を気にする女の子がいた
自分がクラスで目立つ方なのか目立たない方なのかポジションを気にかけているようだった
高校に進学すると何度も何度も学校の友人と通話をしたり遊びに行ったりと楽しく過ごしているという話をしてくれた
最初はこの子も新しい場所で居場所を見つけられたのだと微笑ましく話を聞いていたが会う度に繰り返し話を聞かされるうちにそんなに自分が幸せであるという事を確かめるかのように必死になって話さなくてもいいのにと思うようになった
外に向けて自分の幸福を見せびらかしたって誰も答え合わせなんてしてはくれない
自分の選択が間違っていなかったかどうかはすぐには分からなかったりひょっとしたら最後まで分からないかも知れない
もし仮に判断を下す機会があったとしてもそれをするのは結局の所自分自身でしかないのだから
あらゆる事象は「己の胸に羅針盤を持て」という結論へと収束する
近況報告
城を追われたので引っ越します
昔話
小さな国の王は民の暮らしがよりよくなることを何よりも望んでいました。
この国の人々は肥沃な大地と綺麗な水の恩恵を受け自然の中で暮らしていました。
いつまでもこの平穏な暮らしができたならどれ程良かったことでしょう。
近隣の大国が大陸統一の足がかりとしてこの国を侵略するという不吉な噂が囁かれるようになりました。
民の暮らしを守るために王様は頭を抱えました。
このままではこの国が滅んでしまう。国を守るために戦うとしても圧倒的な兵力を誇る大国相手に勝ち目はなくいたずらに死者を出してしまう。
考えた末王は決意しました。この国を守るために戦うことはやめよう。
争わずできるだけ高くこの国を大国へと売りつけてやろう。
最も民の暮らしが守られる方法を探ろう。
進軍の拠点として豊かな大地を持つこの土地は有用な補給地点となる。
もしこの土地が戦場となれば大国はそれを失うこととなる。
そうなれば大国の進軍は後れを取ることとなり、敵対するもう一つの大国がその間に力を蓄え情勢は悪化するだろう。
王はできる限りの交渉材料を考えました。
しかしながら国の中には王の方針を良く思わない勢力がありました。
王は売国奴である。命を賭して国の存亡のために戦うべきだ!という声が日に日に強くなっていきました。彼らもまた国を思う気持ちから主張したのです。
それでも王は考えを改めようとはしませんでした。
大切なのはこの国を生きる人々の暮らしが豊かであること。
暮らす土地の名が変わろうと所属する国が変わろうと人々がこの豊かな自然の中で生きていけるのであればそれが王の望むところだったのです。
小国が大国の占領下となり、その名を奪われたならばこの地は世界から消滅してしまう。そのような思い込みが邪魔をして人々は王の考えを受け入れることができませんでした。結局王は誰よりも民の暮らしを思いながら、その民に理解されることなく反対派の行動は次第にエスカレートしていきました。そしてそれが極限まで加熱していたのです。強硬派の反対者達は大国へと交渉に行く王を道中で襲い、殺害してしまいました。
そうして大国へと戦線布告をした小国は国を守るために戦いました。そこに正義があると信じて。
王と民のすれ違いの果てに残されたのは赤い大地だけでした。
そこにはもう、かつての豊かな自然の面影はありませんでした。
正論との対話
正論というものがある。常識的に考えて今はこうするべきだろうだとかこの台詞を言うのが正しいであろうなどという判断を私たちは自身の中にある正論と照らし合わせながら行っている。
先生が生徒を指導するときにはよくこれが行われているのだと思う。
生徒を正しさの方へと導くために先生は正論を語る。
この時行われるコミュニケーションは生徒と先生の1対1の対話ではなく、先生と正論の対話である。そして生徒は傍観者。
目の前の生徒ではなく先生は正論の方ばかりを見て話す。
生徒の中にも正論はある。だから指導を受けている生徒もそんなことは分かっているという苛立ちを覚える。それと同時に疎外感も生まれる。
先生を責めることはできない。それは正しい行いなのだから。それを求められる立場なのだから。
バカと悪戯
移動教室の帰り道廊下を歩いていると声をかけられる。
誰かと思えば小学校からの腐れ縁のバカだった。
バカとは随分と辛辣な物言いだと思われるかも知れないけれどこれは仕方のないことなのだ。
私が彼をそう認識するようになるまでの歴史はここでは語り尽くせない。
振り向いて損をした早く教室に帰ろう。そう思ってくるりと方向転換しそそくさと歩き出す。
それでもバカはしつこく呼びかけてくる。
どうやら彼は次の授業で使う歴史の教科書を借りに来たらしい。
例え相手がバカでも困っていたら情けくらいかけてあげる。自分で言うのはなんだけど私は優しいのだ。
教室まで付いてきたバカに綺麗に使うよう念を押し教科書を貸す。
翌日の社会の授業中教科書を開くとそこには見るも無惨な偉人達のご尊顔が並んでいる。やられた!生存者は数えるほどしかいない…これは間違いなくあのバカの仕業だ。
しかし落書きとはいえなかなかに丁寧な仕事である。
バカの意外にも繊細な仕事っぷりに少しばかりの関心を抱きながら眺めていると不穏な影が背後に迫る。不運にも先生に教科書を覗かれてしまったのだ。
楽しそうだな?
すごい…圧です。
弁明の余地も与えられずに落書き魔として晒し上げられクラスの笑いものになった。
恩を仇で返すとは…あのバカただでは済まさぬ。
絶対にいつかやり返してやると心に決めた。
あの事件から数週間。
昨日の今日で教科書を借りに行っては流石に不自然であるから事件が風化しバカの警戒心が緩くなるまで数週間寝かした。
じっくり熟した計画を今日実行に移すのだ。
私はバカのいる教室に行きバカの教科書を借りた。
バカの教科書を開くと本文が全てピンクの蛍光ペンでなぞってあった。
重要なところを目立たせるための蛍光ペンがまるで意味を為していない事に驚くと共に持ち主に似て教科書も随分と煩いものだなというような事を考えていた。
バカとは違い落書きなんて幼稚な悪戯はしない。
私はバカの教科書の漢字に絶妙に違う読み仮名を振っていった。
これで授業中先生に当てられて教科書を読むことになったときに赤っ恥をかくがいい!
時限爆弾が仕込まれた教科書を私はバカに返した。