中3くらいで国語で習った高瀬舟ってあったよね

足るを知った後で人はどう生きていけばいい?

いつだって世間は何かを手に入れろとうるさいんだ

そういう騒音を聞き流して悠々と過ごしていけば別にいいのか

 

働かないので食べません

大学生になって自分の遊び代くらいは稼ごうとバイトをはじめた。

一番最初にやったのは近所のアダルトショップ店だ。

店の外にあった従業員募集中の旗を見かけて電話をしてみたらすぐに面接に呼ばれ採用が決まった。

業務内容は店内の清掃、エロ本とビデオのラッピング、商品陳列、店内放送で今週の新作を紹介、レジなどだ。

店内放送では淡々とAVタイトルを読み上げた。1つもタイトルは覚えていない。

お客さんは中年のおじちゃんが多かった。従業員も大体中年のおじちゃんだった。

店長は小太りで最初にかけられたひと言が「君は前戯が長そうだね」だったのであまり良い印象はない。流石アダルトショップ店長はちげぇや!という謎の感想を抱いた。

オナホールとローションがよく売れた。

店長が生理的に無理だったので3週間ほどで辞めた。

次にやったのは某お弁当チェーン店のバイトだ。

近所に新たに開店するということでオープニングスタッフとして採用された。

お弁当の注文がレジではなく電子パネルで行われる新しめのシステムだった。

そのせいでピーク時の注文スピードがものすごく速く、注文一覧が3ページ分くらいたまってしまいお客様を30分以上待たせるという事態になった。

不慣れなオープニングスタッフだけで裁くには到底無理な量の注文が一気に押し寄せてしまったのだ。

助っ人に社員が来るようになったが、その社員との相性が最悪だった。

まだやったことのない業務をいきなり振られたときにはその旨を伝えると

教えて下さいだろ!と高圧的に言われ、他のバイトを自分の前で露骨に褒めたあとに小言をいってくるような事もあった。

そんなこんなでこちらも3週間ほどで辞めた。

そもそも遊ぶ金をちょっと稼ぐことが目的なのにストレスで精神を破壊されては楽しく学生生活も送れやしないのだから本末転倒だ。

自分は目的を見失わない人間なのだ。

結局大学時代のバイトで続いたのはそのあとにやった学童保育の仕事だけで3年ほどお世話になった。

子どもたちは喜んでいっしょに遊んでくれたし、かわいかった。様子を見ているのが面白かった。勿論かわいげのないことも言うけれど全く気にはならなかった。

 

大学4年生になったとき周りは就職活動をしていたけれど、自分は卒業研究に専念する等と適当なことを親に言い、結局ろくに就職活動もせず進路も決まらないまま卒業した。

卒業後から数ヶ月は家でだらだらと過ごした。周りが公務員や大企業に就職して働いている中引きこもっている現状に焦りを感じるようなことは微塵も無かった。

元より他者と比較するようなタイプではなく自分は自分といった感じで飄々としていた。

あまりにも就職する気配のない私を見かねた母にハローワークへと連行された。

二十歳を過ぎたいい大人が母親に連れられて来るなんて職員の方も驚いたのかも知れないし案外見慣れているのかも知れない。

やりたいことも求める条件もないので求人を絞るに絞れなかった。

とりあえず適当に検索用のパソコンを眺めては帰宅するのを繰り返した。

結局ハローワークで職を探すことは断念し、塾で講師としてバイトをすることになった。

学歴だけはあったので難関大学の卒業者として歓迎された。

子ども相手の仕事は唯一長く続いたバイトからも適性がなくはないと思えたし、中高生の解くような問題を解説することは容易かった。

1年間そこで講師として務め、翌年から社員としてその塾の塾長を任された。

しかしながら勉強を教えたり子どもとコミュニケーションを取ることはできても簡単な事務作業が私にはできなかった。絶望的なまでにできなかった。

講師としての仕事は適性も感じていたし上手くやれている役に立てている自信があったのに塾長としてはまるでダメだった。

周りに迷惑をかけながら自分の能力を腐らせて過ごす事が心苦しかった。

週に5日フルタイムで働く程生きていくのにお金を必要としていなかったので正社員を続ける事にも疑問を感じていた。

自分にはあまり物欲がない。給料の7割くらいはあまってそのまま貯金になっていたしそんなもののために1週間の大半を拘束されるのは無駄が多いような気がして仕方がなかった。

自営業で生きる、フリーランスとして生きるみたいな選択肢もあるようだったけれど自分にそんなガッツもない。

とりあえず正社員としては無理だその先に自分の幸福は存在しない。ただそれだけは分かったので次に何をするのかは決めずに仕事を辞めると上司に伝えた。

働かないとお金を稼げない。お金がないと食べていけない。生きていくために次の職を探しなさい。どのように生計を立てるのかを考えなさい。ねぇ、次は何者になりたいの?母はそのようなことを問うてきた。

お金がないと生きていけないこともなかったらどうにかなるのにな。

学生のバイトでも賄えるくらいのめちゃくちゃランニングコストの低い質素な生活を気が向いたときに頑張って働きつつ回していければそれが理想。

若い間はそれで良いかもしれないけれど将来どうするんだ?っていう気もするけれど

向いていない正社員を続けていれば間違いなく自分は歳を取ることも無く自殺する。

もしもその日暮らしな生活が回らなくなって役立たずは死ねっていうのが世間の出した答えならばそれが自分の寿命なのだろう。自分の人生はそれでいい。充分に満たされている。雨の音、風と土と水のにおいを感じながら本を読んで空想に耽る。それ以外は何も要らないのだから。それ以外を得るために行動を起こす理由もない。

自然に眠るように死ねたらもう言うことはない。

 

サンタなんていない

サンタなんていない。クリスマスのプレゼントを運ぶのは赤い衣装を着た白髭のお爺さんとトナカイではなくてお父さんとお母さんなんだ。

 

確かにそうかも知れない。子どもたちのところへプレゼントを運ぶ優しいお爺さんはいない。

だけれど「サンタ」がいないと言い切ってしまっていいのだろうか?

現に君の元にはswitchが届いた。クリスマス以外のタイミングでお父さんお母さんに頼んだところでなかなか高価なゲーム機は買ってもらえないだろう。

それを可能にしたのはクリスマスに子どもへプレゼントを贈るという風習だ。

それこそが「サンタ」なんだ。

より高次な抽象的概念である「サンタ」がおもちゃ屋にプレゼントを買いに行く両親という形をとってこの世界に影を落とした。そうして君はプレゼントを手にした。「サンタ」の働きは確かに存在している。

あなたを思う

男と女、大人と子ども、日本人と外国人、お金持ちと貧乏人

それぞれの属性で分離して味方と敵、こちら側とあちら側で対立する

我々を苦しめる悪者を打倒することで救われる

そんな魔王を倒したら世界は幸せになってハッピーエンドみたいな安易な物語でこの世界は語れない

それぞれに抱える生き辛さがあって走って転んで膝をすりむいたら血が流れて同じように痛いんだ

若者と老人の話をするときに祖母の顔を思い出す

男と女の話をするときに友の顔を思い出す

あなたが接してきた人の顔が浮かぶのならばこちらもあちらもないという事に気が付くはずだ

白と黒の間にはグラデーションがあって人と人との関わりがそれを思い出させてくれる